本からつながる出会い

ぼくの奮闘記、『GO TO TOGO 一着の服を旅してつくる』(烽火書房)を刊行して、京都市中京区にある書店・レティシア書房さんで出版記念イベントを開催しました。その書店の店主・小西さんがめちゃくちゃいいひとで、近隣の書店などにもDMをまいてくださいました。そのDMを手にとって足を運んでくださった方から衝撃の事実を聞かされました。「わたしの友だちの旦那さん、確かトーゴ人ですよ。」すぐにコンタクトを取ってもらい、会いに行きました。

コロナ禍で起こった奇跡

ぼくが普段、出入りしているコミュニティスペースから歩いて15分くらいのところに住んでいたデアバロさん。トーゴのアニエという村の出身で、仕立てを学び、それからガーナやベナンで仕立て屋の仕事をしていました。トーゴにはあまり仕事がないので、出稼ぎに行く人が多かったりします。グラン・ポポというトーゴとの国境沿いの町で営んでいた仕立て屋は繁盛店へと成長、クリスマスなど、時期によっては寝る時間もないくらいに忙しかったそうです。

そのお店のまえに住んでいたのが、青年海外協力隊の隊員だったリエさんです。彼女と恋におちて結婚、2017年に来日しました。趣味のサッカーつながりで見つけた仕事は宅配便の仕事。平日はそこでアルバイトをしつつ、休みの日に服を仕立て、手づくり市に出店されていました。しかし、このコロナ禍で手づくり市も中止になっていたタイミングに、ぼくと出会ったのです。

怒涛の3ヶ月 お店をオープン

これを運命と呼ばずして、なんと呼ぶ。デアバロさんは、いつか日本でもお店をもちたいという夢を語ってくれました。けれど、もっとファンをつくらないと難しいと慎重でした。そこで、一緒に作品をつくってみようと誘い、秋冬のシーズンに向けてブルゾンを仕立ててもらうことにしました。それが巷で好評を博し、ふたりでお店を出してみようということに。アフリカドッグスとしても、お店をもって、新しい展開を模索したいと思っていた時期でした。

仲間のつながりで、京都の不動産屋「フラットエージェンシー」の方々と話す機会があって、さっそく相談してみたところ、西陣に風情のあるアトリエを紹介してもらうことができました。創業して3年目がスタートしてすぐに開店準備にとりかかり、2020年11月にお店をオープンしました。なんと、ここまでデアバロさんと出会って、わずか3ヶ月間の出来事でした。

出会いが人生を前に進めてくれる

一緒に働いてみて、デアバロさんはとても調和を大切にする人だなと思いました。なにか問題が起こっても、もめないような立ち振る舞いをしてくれます。お客さんとの信頼関係を大切にしてくれるので、家に仕事を持ち帰ってでも、注文をいただいてから1週間くらいでスピーディーに仕立ててくれています。ユーモアに溢れていて、たまにアフリカ人をみたときの日本人のモノマネをしてくれます。そんな彼と一緒に食べるトーゴのソウルフード・エヴェスィスィはめちゃくちゃ美味しいです。

人との出会いが、人生を前に進めてくれるのだと思います。オープンしたお店が、どこかのだれかの人生をポジティブに変えていける存在であるように、がんばってお店をきりもりしたいと思います。だいたい週末、「西陣ろおじ」という路地の奥にあるアトリエに居ます。お気軽に遊びにきてください。お待ちしています〜!